2012年12月07日

佐賀市医師会に寄稿した原稿

以前、佐賀市医師会に寄稿した原稿が残っていたのでよろしければ読んでください。
「若手医師のささやき」というコーナーに載せていただきました。


「漢方薬のキーワード」
平成22年12月に佐賀市兵庫町に開業した山内昌樹です。
趣味もなく、皆さんに興味を持って読んでいただけるような経験もない若輩者ですが、最近漢方薬を処方していて、驚いた経験がいくつかありましたので、諸先輩方には当たり前の事かもしれませんが、ささやいてみようと思います。まずは自己紹介から、、、
統合医療やまのうち小児科・内科は小児科、内科、アレルギー科、漢方小児科、漢方内科、漢方アレルギー科、を標榜科目にしています。出身は奈良県です。佐賀医科大学を卒業後、故郷の奈良県立医科大学の小児科に入局しました。特に専門とするものはなく一般小児科医として勤務しておりました。奈良医大小児科の大きな柱が、血液疾患、特に血友病や凝固異常症で、先輩の医師と一緒に診療させていただいていたので血友病、凝固異常の疾患については、経験が多いほうかもしれません。大学院まで出ましたが、紆余曲折ありまして、困っている患者さんをなんとか治したいという思いがつのり、以前より存じ上げていた、矢山クリニックの矢山先生にお願いして、漢方や代替療法を駆使して診療する現場に関わらせていただく機会を得て、出身大学の佐賀の地に戻って参りました。
開業してみてまず驚いたのは、診療以外の雑務の多さでした。医師である前に経営者でもあるという立場は、やってみないとわからない、「ストレスいっぱい、不安いっぱい、いつまでたっても損益分岐点に来ない恐ろしさ」と日々向き合っております。開業されている先輩ドクターの皆さんに本当にあたまが下がります。
さて本題ですが、当院では治療のメインとして漢方薬を処方しています。小児の場合ツムラ98黄耆建中湯、99小建中湯を軸に様々な症状に合わせて漢方薬や西洋薬を組み合わせて処方しております。特に喜ばれるのは、乳児期の夜泣きです。ツムラ72甘麦大棗湯は、うまく効く場合は、1時間おきに泣いていたお子さんでも、数日で夜泣きの回数が減ってきます。甘麦大棗湯というお薬は、大棗(ナツメの実)、甘草(生薬を調和する役目、甘味料にも用いられる)、小麦(鎮静効果があると言われている)の3種類の生薬で構成されており、ほとんど食べ物と変わらず、漢方薬の中では一番甘いと思われるものです。何が効くのか本当に不思議なのですが、効く時にはピタっと効いて、親御さんにとても感謝されます。また先日、疳の虫が強いお子さんにツムラ54抑肝散を処方したのですが、その子は、診察時から落ち着きがなく、ずっとぐずっていました。見るからに疳の虫が強いことがわかるお子さんだったのですが、頑張ってお薬を飲んでくれて、14日後の診察時には普通のおとなしいお子さんになっており、親御さんも「性格が変わったように落ち着いた」と仰っていました。もちろん、全く効かない場合もあり、日々悪戦苦闘していますが、時に劇的に効果が出る症例があり、やっててよかったと思う瞬間です。
当院には漢方薬を求めて大人の方も受診されることがあります。その中でもよく経験するのが大きなストレスを抱えた女性の患者さんです。見た目は普通にされていますが、診察の中でお話を聞いていくうちに、かなり強いストレスがあると想像することがあります。漢方薬には様々な抗ストレス薬がありますが、我慢に我慢を重ねた状態になった時は、クラシエ83抑肝散加陳皮半夏が効くことがあります。抑肝散加陳皮半夏が効くのは、仕事や家庭で「言いたいことが言えない状況」「言っても聞いてくれない状況」で我慢を重ねている時にストレスを軽減してくれるようです。このキーワードに当てはまるかどうかを聞いてみるのですが、その時に「いっぱい我慢していますね」と声をかけると、涙ぐむ患者さんもおられます。毎日診察で1〜2人は泣かせる、ということが続いた時もありました。詳しく話を聞くと、嫁姑問題があったり、ご主人があまり家庭をかえりみない方であったりすることが理由になっていることが多いようです。最近認知症に抑肝散や抑肝散加陳皮半夏が効くことがあると話題になっていますが、「言いたいことが言えない状況」「言っても聞いてくれない状況」で我慢を重ねているという意味では、認知症の患者さんだけではなく、介護なさっている御家族、双方に効果があるのではないかと思っています。また小児では、イジメなどが原因で登校できなくなったり、不眠症になった症例に使用して、効果があったという経験もあります。
他の漢方薬のキーワードとしては、クラシエ49加味帰脾湯は「落ち込んでいて、同じ思考がぐるぐる回って前に進めない状況」に。ツムラ80柴胡清肝湯は「こだわりが強く、こうでなければならないという思いが強いが、周りがそうしてくれない時のイライラ」に。ツムラ48十全大補湯は「毎日忙しく働いている女性の疲労」によく効く場合があります。なかでも先ほどの柴胡清肝湯のキーワードは、診察の場で子どもの行動を観察していて気がつきました。そのお子さんはすごく几帳面で、診察室でミニカーで遊んでいた時、きっちり並べて遊んでいたので、お母さんに普段の様子を聞いたところ、おもちゃの並び方にも決まりがあって、こだわりが強いということでした。その後、柴胡清肝湯が効く方の特徴を見ていると、大人であれ、子どもであれ「ねばならない」「かくあるべし」という思いが強く、周りがそれを理解してくれない時にイライラする方に効果があるようだと分かって来ました。今まで漢方薬の成書でそのような表現は拝見したことはありませんが、ピタっと話が噛み合った時には、やはり効果が高いように感じています。
このように、漢方薬の性格=「キーワード」がわかってくると、患者さんとの会話も自然と心理的に深い面まで掘り下げることができるので、患者さんの満足度も高まるのではないかと、自己満足しております。これからも、新しい「キーワード」がないか注目しながら診察をしていこうと思っております。諸先輩方には色々ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、ご指導よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
posted by くま at 17:33| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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